[動物]アライグマ,雄,13歳.
[臨床事項]本症例は東日本の観光施設において飼育されていたが,視覚障害を呈し,飼育が困難になったためと,公衆衛生上の理由により安楽殺された.
[剖検所見]膵臓は1×15×0.8 cm であった.眼球は白濁し,肝臓はやや黄色調を呈していた.
[組織所見]本例の特徴は膵島への硝子化物質の沈着である.硝子化物質は膵島細胞間およびその毛細血管周囲に認められた(図 1).コンゴーレッド染色・蛍光法において硝子化物質は橙黄色を呈し (図 2),EM像では径 8 nm 前後の直線状で分岐の見られない細線維が密に錯綜していることから(図 3),硝子化物質はアミロイド物質であると確認できた.また,免疫組織化学的検索では,抗アミリン抗体陽性,抗インシュリン抗体と抗グルカゴン抗体は陰性を示した(図 4:抗アミリン免疫染色).
[診断]飼育下アライグマにみられた膵島アミロイド症
[考察]膵島アミロイド症はインシュリン非依存性糖尿病や高齢のヒト,ネコなどでみられ,アミリン由来であることが知られている.本例でみられたアミロイド物質も抗アミリン抗体陽性であることから,ヒトやネコと同様にアミリンに由来すると考えられる.臨床的な詳細は不明であるが,他臓器で糖尿病を示唆する所見が得られなかったことと,検索できた他個体の比較から年齢に相関した加齢性の変化であると考えられた.なお,野生下でも同様の病態がみられるか不明のため,飼育下アライグマと限定した.(薮添敦史)
[参考文献] 1. Lutz,T.A. and Rand,JS. 1995. Vet. Clin. North. Am. Small. Anim. Pract. 25: 527-552.
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