No.865 フェレットの肺

山口大学


[動物]フェレット,去勢雄,5歳.
[臨床事項]本症例は食欲減退を主訴に 2001 年 11 月 4 日に開業動物病院に来院した.X 線検査によって左中葉に陰影像を認め,肺炎を疑い抗生剤を投与したが,反応しなかった.11 月 24 日には陰影像は前葉にまで広がっていた.1 月 10 日には陰影像は全葉に広がり,心肥大も認めた.抗生剤,強心剤,ステロイド剤を処方したが,1 月 20 日に死亡.
[剖検所見]剖検は開業獣医師により行われ,報告を受けた.肺の全葉に1〜6 mm でやや硬度を増した不整形白色調の小結節が密発していた.胸水,心嚢水貯留,右心系の拡張を認めた.
[組織所見]提出標本の弱拡大像では,炎症が強くなく石灰化が見られる所(図 1),炎症と石灰沈着が見られる所(図 2),骨の形成が見られる所(図 3)と,炎症のみが強く石灰化が認められない所と言った部位が認められた.炎症の部分はコレステリン結晶だと思われる,長紡錘形の隙間,肺胞内への肺法内への泡沫細胞の浸潤,また異物巨細胞も見受けられた.一方,石灰化は形成部位は肺胞腔内(図 4)で,PAS 陽性で,タマネギ状に渦巻きを形成して染色されています(図 5).検索した他の臓器では石灰化は認められなかった.
[診断]フェレットにおける骨化生を伴う石灰沈着および類脂質肺炎
[考察]炎症部以外で肺胞内の石灰化が認められる事,他臓器では石灰化が認められなかった事から,炎症に伴った異栄養性または転移性の石灰化でないと考え,また石灰化の形成部位また石灰小球の特徴から,提出者は肺胞微石症と考えた.しかしながら,形成した石灰小球の数が少ない等の意見があり,診断は単に石灰沈着となった.(森本將弘)