No.977　マウスの肺結節


No.977　マウスの肺結節		三菱安科研

［動物］マウス，Crj:B6C3F1，雄，110 週齢．［臨床事項］104 週間メチルセルロースを強制経口投与後，計画解剖を実施した．一般症状で異常は認められなかった．［剖検所見］右肺後葉にφ5mm の白色結節が 2 つ認められ，それらを含んで後葉 2/3 が白色化していた．［組織所見］肺葉の既存構造を保持しながら，粘液を有する腫瘍細胞が，不規則ながら腺管様／腺房様に増殖していた（図 1, 2）．基底膜は不連続で，腫瘍細胞の多層化が認められ（図 3），有糸分裂像や PCNA 陽性細胞が多数認められた（図 4）．また，一部で，細気管支上皮細胞から腫瘍細胞への移行がみられ，その移行部では CC-10（クララ細胞のマーカー）陽性像が認められた（図 5）．［診断］ Carcinoma，acinar ［考察］本症例は粘液を有する細胞の腺房様増殖が主体を占めることが特徴と考え，Carcinoma, acinar と診断した．Carcinoma, acinar は，クララ細胞由来と考えられており，自然発生性では極めて稀とされる [2] ．本症例でも腫瘍細胞の細気管支上皮細胞からの移行像およびその移行部における腫瘍細胞の CC-10 陽性像から，クララ細胞由来が示唆された．慢性吸入毒性試験などで肺胞上皮や細気管支上皮に粘液化生が生じること [2] や化学物質誘発性 Alveolar/Bronchiolar（A/B）腫瘍で粘液化生領域がみられることがあること [1] から，その variant と考えることもできるが，本症例の特徴的な形態を示す診断名として Carcinoma, acinar とした．［参考文献］ 1) Dixon, D., et.al. 1999. Lungs, Pleura, and Mediastinum. pp.293-332. In: Pathology of the mouse. (Maronpot R.R. ed.) Cache River Press, USA. 2) Dungworth, D.L., et.al. 2001. Respiratory System and Mesothelium. pp.87-138. In: International Classification of Rodent Tumors. The Mouse. (Mohr U. ed.) Springer.

No.977　マウスの肺結節

三菱安科研

［動物］マウス，Crj:B6C3F1，雄，110 週齢．
［臨床事項］104 週間メチルセルロースを強制経口投与後，計画解剖を実施した．一般症状で異常は認められなかった．
［剖検所見］右肺後葉にφ5mm の白色結節が 2 つ認められ，それらを含んで後葉 2/3 が白色化していた．
［組織所見］肺葉の既存構造を保持しながら，粘液を有する腫瘍細胞が，不規則ながら腺管様／腺房様に増殖していた（図 1, 2）．基底膜は不連続で，腫瘍細胞の多層化が認められ（図 3），有糸分裂像や PCNA 陽性細胞が多数認められた（図 4）．また，一部で，細気管支上皮細胞から腫瘍細胞への移行がみられ，その移行部では CC-10（クララ細胞のマーカー）陽性像が認められた（図 5）．
［診断］ Carcinoma，acinar
［考察］本症例は粘液を有する細胞の腺房様増殖が主体を占めることが特徴と考え，Carcinoma, acinar と診断した．Carcinoma, acinar は，クララ細胞由来と考えられており，自然発生性では極めて稀とされる [2] ．本症例でも腫瘍細胞の細気管支上皮細胞からの移行像およびその移行部における腫瘍細胞の CC-10 陽性像から，クララ細胞由来が示唆された．慢性吸入毒性試験などで肺胞上皮や細気管支上皮に粘液化生が生じること [2] や化学物質誘発性 Alveolar/Bronchiolar（A/B）腫瘍で粘液化生領域がみられることがあること [1] から，その variant と考えることもできるが，本症例の特徴的な形態を示す診断名として Carcinoma, acinar とした．
［参考文献］
1) Dixon, D., et.al. 1999. Lungs, Pleura, and Mediastinum. pp.293-332. In: Pathology of the mouse. (Maronpot R.R. ed.) Cache River Press, USA.
2) Dungworth, D.L., et.al. 2001. Respiratory System and Mesothelium. pp.87-138. In: International Classification of Rodent Tumors. The Mouse. (Mohr U. ed.) Springer.