No.1114 ニワトリの眼球

日生研


[動物]ニワトリ,GSP/pe系,雄,52 週齢.
[臨床事項]本症例はファヨウミ種由来の近交系である GSP 系ニワトリに出現した不完全アルビノ様個体である.起源種に比較して羽装の黒色部の淡明化がみられ,成長とともに眼球の突出,白濁を示してくることから,眼球の病態を検索するために送付され,剖検に供された.
[肉眼所見]外観において,両側の眼球は軽度に腫大および突出し,水晶体が混濁していた.眼球は高度に硬化しており,固定後の割断ができなかったため,EDTA 脱灰後に割断した.眼球内部には灰白色充実性硬組織が充満し,眼内組織の判別ができなかった.
[組織所見]角膜に異常所見はなく,虹彩および毛様体は形態の変形,色素細胞における色素の減少,軽度の炎症性細胞の浸潤が認められた.水晶体では水晶体線維の融解・消失がみられ,水晶体嚢を残すのみであった(図 1).眼内には硝子体,網膜および櫛膜を巻き込んで骨組織が増生し,充満していた(図 2).眼底部において,網膜色素上皮は認められず,骨組織の外側にはブルッフ膜様構造が認められ,その外周には線維化して増生した脈絡膜,軟骨層を含む強膜が認められた(図 2).眼内には硝子体,網膜および櫛膜を巻き込んで骨組織が増生し,充満していた.これらの骨組織は海綿骨様の形態を示し,骨髄腔を形成し,その中には破骨細胞および造血細胞が観察された(図 3).骨組織の表層あるいは内部にはチュブリン抗体陽性の神経網膜断片が観察された(図 4 および挿入図).
[診断]GSP/pe 系ニワトリにおける眼内骨形成(網膜色素上皮の分化転換を疑う)
[考察]眼内における骨の形成はヒトおよび動物でも報告があり,ヒトでは慢性眼内疾患に関連して認められている.網膜色素上皮細胞は神経外胚葉由来であるが,培養条件によって上皮−間葉転換を起こすことが知られている.本症例も組織学的にその発生母体として網膜色素上皮が疑われた.(渋谷 一元)
[参考文献]
1) Yoon, Y. D., Aaberg, T. M. Sr., Wojno, T. H., Grossniklaus, H. E. Osseousmetaplasia in proliferative vitreoretinopathy. Am. J. Ophthalmol. 125: 558-559, 1998
2) Vemuganti, G .K., Honavar, S. G., Jalali, S. Intraocular osseous metaplasia. A clinico-pathological study. Indian J. Ophthalmol. 50: 183-188, 2002