No.1131 ウマの腎臓腫瘍

宮崎大学


[動物]ウマ,サラブレッド,去勢雄,17 歳.
[臨床事項]2014 年 4 月下旬に後肢の腫脹および発熱が見られ,同年 5 月初旬に後肢の腫脹は改善されたが,同年 5 月 6 日に死亡した.肉眼所見:腹腔内に脾臓腫瘤破裂に伴う腹腔内出血を認めた.脾臓,肝臓,肺において多発性白色〜乳白色結節を認めた.右側腎臓は,高度に腫大(直径 23×20×17 cm 大)し,大部分が腫瘤に置換されていた.腫瘤割面は乳白色充実状,胞巣状,脆弱であり,出血および壊死巣が見られた.腎門,肺門,腸間膜,胃リンパ節は高度に腫大していた.
[肉眼所見]腹腔内に脾臓腫瘤破裂に伴う腹腔内出血を認めた.脾臓,肝臓,肺において多発性白色〜乳白色結節を認めた.右側腎臓は,高度に腫大(直径 23×20×17 cm 大)し,大部分が腫瘤に置換されていた.腫瘤割面は乳白色充実状,胞巣状,脆弱であり,出血および壊死巣が見られた.腎門,肺門,腸間膜,胃リンパ節は高度に腫大していた.
[組織所見]腫瘤は,血管結合織で区画されながら胞巣状,充実状に配列していた(図 1).腫瘍細胞増殖巣において管腔形成を認めた(図 2).独立類円形腫瘍細胞は,大型類円形〜多形性核,明瞭な核小体ならびに好酸性細胞質を有し,大小不同は明瞭であった(図 3).N/C 比および核・細胞異型は高度であった.高倍率視野で有糸分裂像を 3 個認め,異型分裂像も散見された.脈管侵襲像が確認された.腫瘍細胞は,Cytokeratin (AE1/AE3)(図 4), Cytokeratin 8/18 および Cytokeratin 20 の各抗体にいずれも陽性を示した.管腔形成部でも同様の結果であった.一方,Cytokeratin 7, CD10, Vimentin, Melan A, Chromogranin A, Synaptophysin 抗体に陰性を示した.その他の臓器では,肝臓,脾臓,肺,副腎ならびに所属リンパ節において上記と同様の所見を認めた.
[診断]ウマの腎細胞癌 (Renal cell carcinoma in a horse)
[考察]ウマの腎臓由来腫瘍の報告数は少なく,特に腎細胞癌(腎腺癌)では,20 数例にとどまる.そのほとんどが,乳頭状,管腔状,充実状に配列する.本症例では独立類円形の腫瘍細胞が血管結合織に区画されながら充実状,管腔状に増殖していた.肉眼的には腫瘤は腎臓髄質から皮質に位置していた.組織学的に腫瘍細胞は管腔を形成し,Vimentin, Melan A ならびに Chromogranin A 抗体に陰性を示したため副腎腫瘍を否定した. ウマでは,本症例でみられた低分化型腎細胞癌の報告はなく,極めて稀な症例と考え出題した. (福家 直幸・平井 卓哉)
[参考文献]
1) Wise, L. N., Bryan, J. N., Sellon, D. C., Hines, M. T., Ramsay, J., Seino, K. K. 2009. A retrospective analysis of renal carcinoma in the horse. J Vet Intern Med. 23: 913-918.
2) 久保田直樹,村上智亮,安田峰,松井基純,古林与志安,古岡秀文,松井高峯,佐々木直樹,石井三都夫,猪熊壽. 2011. ペルシュロン種繁殖馬にみられた遠隔転移を伴う腎細胞癌の 1 症例. 北獣会誌. 55: 54-56.