[動物]イヌ,ラブラドールレトリーバー,雄(未去勢),11 歳.
[臨床症状]眼瞼腫瘍の切除手術時に舌根部に腫瘤を認め,同時に切除した.そのほか諸検査で異常を認めなかった.
[肉眼所見]腫瘤は 2.5×3.0 ㎝ で,舌根の背側表面に有茎性に突出し,表面はカリフラワー状を呈し(図 1),割面は白色充実性であった.
[組織所見]過形成性の粘膜上皮に被覆された腫瘤では,主に卵円形の核と紡錘形の細胞質を有する腫瘍細胞の束状増殖が認められた.核を両端に配し,その間に好酸性均質無構造物を挟む Verocay 小体も見られた(図 2,スケール:50 µm).さらに神経節細胞が種々の程度に分布し,衛星細胞やニッスル小体を有するものも多く,二核の神経節細胞も認められた.(図 3,矢印,スケール:50 µm).紡錘形細胞は NSE,S-100,NGFR(図 4,スケール:50 µm),GFAP(図 5,スケール:50 µm)陽性の Schwannian cell であり,神経節細胞は NSE,S-100,NGFR(図 4),βⅢ-tubulin(図 6,スケール:50 µm)に陽性を示した.
[診断]Ganglioneuroma
[考察]本症例は,腫瘍内に神経節細胞が認められたことから,ganglioneuroma のほかに,神経節を巻き込んだ末梢神経鞘腫や traumatic neuroma,また ganglioneuromatous hamartoma の可能性が挙げられた.Schwannian cell による Verocay 小体形成から腫瘍性の増殖であると判断し,また二核化した異型神経節細胞が認められた点から,神経節細胞も腫瘍成分と考えた.Shimada 分類1) に基づき,本症例は Schwannian cell 主体の成熟神経節細胞を含む ganglioneuroma と診断した.本腫瘍の発生母地として有郭乳頭および葉状乳頭基部の hemiganglia が挙げられるが2),確定はできなかった.ヒトでは舌基部における ganglioneuroma の報告があるが3),イヌにおける口腔内神経芽細胞由来腫瘍は,下顎吻側粘膜の ganglioneuroblastoma の報告のみで4),舌での報告は見られない.(後藤みなみ・酒井洋樹)
[参考文献] 1) Vijay, V. J. 2000. Pediatr. Dev. Pathol. 3: 184-199 .2) Kikuchi, M. 1960. Arch. hist. jap. 19: 331-350. 3) Bharti, J. N. 2013. J. Clin. Diagnostic Res. 7: 2008-2009. 4) Nakamura, K, et al. 2004. J. Comp. Pathol. 130: 205-208.
|