No.1175 ラットの脾臓と肝臓

LSIメディエンス


[動物]ラット,Crl:WI(Han),雄,110 週齢.
[臨床事項]本例は背景データ収集試験にて計画解剖に供されたラットで,一般状態に異常は認められなかった.
[肉眼所見]脾臓に 3 か所の隆起部(直径 5〜8o)が認められ,割面には大小の白色〜淡黄色結節が複数認められた.
[組織所見]脾臓の白脾髄,辺縁帯及び赤脾髄(図 1),肝臓のグリソン鞘及びその周囲に,リンパ球,好酸球,組織球が混在する大小様々な細胞増殖巣(図 2)が多数認められた.増殖細胞には,細胞質に好酸性顆粒を有する細胞(顆粒細胞,図 3,挿入 a)と,光顕的に顆粒は認められないが顆粒細胞と同様の異型な大型核を有する細胞(異型細胞,図 3,挿入 b)があり,両者の中間型の細胞も見られた.好酸性顆粒を有する特徴より,組織球,肥満細胞,形質細胞,顆粒球系細胞由来の腫瘍ならびに Globule leukocyte 腫瘍の可能性を考えた.顆粒は,PAS 陽性,エステラーゼ陽性,PTAH にて青紫色(図 4,矢頭)に染まり,トルイジンブルーでメタクロマジーを示さなかった.免疫染色にて,増殖細胞は Granzyme に陽性(図 5,矢頭),Ki-67 に陽性(異型細胞),Iba1,ED1,κ Light chain,CD3 及び CD20 に陰性であった.PAS,PTAH(図 4,矢印),エステラーゼ及び Granzyme(図 5,矢印)染色において,顆粒を持たない異型細胞の細胞質は顆粒と同様の染色性を示した.透過型電子顕微鏡学的検査では,顆粒細胞の細胞質に膜で覆われた均質な高電子密度の大小顆粒が1個〜多数認められ,rER が豊富であり,一部顆粒内には針状〜細管状構造物も認められた.
[診断]ラットの脾臓及び肝臓にみられた Globule leukocyte 腫瘍
[考察]PTAH 及び Granzyme 染色結果から,顆粒細胞,異型細胞ともに Globule leukocyte であると考えた.増殖細胞が通常髄外造血の見られない白脾髄にも分布していること,肝臓での分布がラットにおけるリンパ腫の特徴に類似していること,細胞異型を示す増殖細胞がみられ Ki-67 陽性を示すことから,炎症や髄外造血ではなく腫瘍と判断した.Globule leukocyte の由来としてナチュラルキラー細胞の可能性が考えられたが証明には至っていない.(友成 由紀)